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日記

 『 ジューンブライド 』  小説編ww

'07年8月21日 23:32












雨が降っていた











空はどんよりと重く、僕の心を押しつぶしてしまいそうだった


いや、押しつぶすのは空だけじゃない


これから始まる、幸せを誓う式の所為








今日は、結婚式だ








―――トントン



不意に、玄関のドアを叩く音がした

古いアパートのドアは、やっぱり古びた木材で出来ている

安っぽい音が、もう一度響く



「・・・なんだ、お前か」



扉を開けてみたその顔は、俺の親友の弘樹だった

「なんだじゃねぇよ、行くぞ?」

少しだけ浮かれた表情の弘樹に、俺は愛想を尽かした

そんな気持ちじゃいられねぇっつーの

それでも嬉しそうな顔で、早く早くと俺を急かす



「・・・分かってるよ」



俺は呟いて、部屋の電気を消した








雨は一向に止む気配はなく、タクシーのタイヤから跳ねた雨水がガードレールを汚していた

俺はそんな光景を見ながらも

頭の中は咲の事でいっぱいだった

なんで、こうなるんだろうな


「なぁ、雨の日の結婚式って縁起がいいらしいぜ」


突然弘樹が言った

タクシーの中で流れるラジオで、どうやらそんな話をしているようだ



“六月に結婚するカップルは幸せになる、なんて昔から日本では言いますけど

そもそもはヨーロッパからの言い伝えらしいんですよ―――”



ラジオの司会者が陽気な声で話していた

「普段雨って嫌なのにな」

笑いながら弘樹は言う

通り過ぎる車が雨水をはじく音で、ラジオは途切れてしまう

「咲も祐司も、幸せになれるって!」

本当、お前は暢気だよな

どうせお前は何も知らない

俺と咲に何があったのか

お前の目にはきっと、4人でずっと笑い合ってふざけ合った、そんな青春しか写ってないんだろう

俺の中には何一つ、青春の思い出なんてなかった

いつも祐司の隣で笑う咲を目で追って、祐司と咲をからかって、二人の仲のよさを自分に刻み付けてきた、俺のそんな時間が、お前の青春だ

そんな事を考えながら、俺はまた車の窓の外に目をやった

仲のよさそうなカップルに、俺と咲の笑顔がダブっていた








「・・・ちっ、違う!そんな事・・・」


咲の戸惑う声が響いた

大学のサークルで使っている部屋で、咲は真っ赤に顔を染めていた

白い壁に、少し多きめの窓

そこに置かれた、無機質なパイプ椅子と組み立て式の茶色い机

その日、空は真っ青に晴れ渡っていた

吸い込まれそうなほどに


そんな天気の所為か、見慣れたはずのその部屋は初めて見るように明るく、白く光っていた

そこにハッキリと浮かぶ真っ赤な咲の顔




“俺の事が気になるか?”




ほんの冗談のつもりだった

俺と咲と、祐司と弘樹。

大学に入ってから知り合ったものの、4人はいつも一緒に行動していた

俺は、もうどうしようもないほど咲を愛していた

だから、自分の本音を交えた冗談をぶつけてみたんだ

そしたら、この通り

この反応に、逆に俺が驚いた


「・・・冗談やめてよ、何であたしが・・」


必死で違うと言う咲の顔は、どう見ても誰が見ても、その通りだとうなずいているようだった

「・・・あっ・・あたし、行かなくちゃ」

咲は焦ったように、部屋を飛び出そうとした


「待てよっ・・!」


俺は後ろから咲を抱きしめていた

「・・・・そうなら、ちゃんとそう言ってくれよ」

咲の耳元で、そう呟くように言った

咲の肩が、小さく小刻みに震えていた

時々吹く春風が、開いた窓から入り込んでカーテンを揺らしていた

「・・・言えない・・」

そう呟きながら、咲はゆっくりと俺の腕を握った

その時知った

お前も俺も、同じ想いだって事

そして、その時知った










祐司と、すでに付き合っていた事










式場もあの時と同じように、白い世界に包まれていた

雨で空はどんよりと曇っているはずなのに、証明や式場本来の白さのおかげで白く優しく光っていた

弘樹と俺は、最初に祐司の所へ行く事にした

祐司とは仮にも親友

行かないわけにはいかない


「なんだよ、いっちょ前にかっこつけて!」


ドアを開くなり、弘樹は祐司に声をかけた

「なんだよ、二人揃って」

嬉しそうに顔をニヤつかせて祐司が言った


「・・・ったく、幸せになりやがって」


俺は皮肉を言った

「こういう時までお前は、口が悪いなぁ!」

弘樹が言った

「まぁまぁ、それが尚也の激励の言葉なんだろ」

祐司はまだ嬉しそうに笑っている

悪いな

コレが、俺の本音だ




「俺、絶対咲を幸せにするからな」




俺と弘樹に誓うように、祐司は言った

胸が、痛い言葉だった

俺が言いたかった

雨の中、祐司は今から、咲に誓う








一生、幸せにすると・・








祐司がいた部屋を出て弘樹は、真っ先に式場へと向かった

俺は、少し探索してくる、そう言って弘樹と別れた

式場の庭を屋根が続く限りその下を歩いていた

ふと、カーテンが揺れる窓が見えた

雨なのに、窓くらい閉めればい・・・

見た瞬間、思考が止まった






「・・・・咲・・」






咲本人が見えたわけではない

でも、何となく分かる

あそこに咲がいる

何が見えたわけでもないけれど、そこには必ず咲がいるはずだ

俺の足は自然と、その部屋へと向かっていた










「・・・・尚也・・・」



咲が悲しそうに呟いた

咲・・・


正直、悲しいなんて言葉はなかった


ただ、目の前にいる咲に見とれていた

それが祐司のものになるなんて、微塵も思えなかった

「・・・濡れてるわ」

そう言って、俺の肩を見つめる

広い部屋の中で、窓際に立つ咲とドア際に立つ俺の距離は10メートルはあった

それは、ゆうに咲の全身を見渡せる距離だった

暗い窓の外とは打って変わって、咲の周りだけ晴れ渡っているようだった

「・・・髪もグシャグシャだし・・何してきたの?」

少しの冗談を言って、咲は俺に笑顔を見せた

綺麗な歯並びをした白い歯が見えていた

「・・・さぁ?」

そう言って、とぼけた表情を見せる

「・・・本当、場に相応しくないんだから」

どうやら咲の笑顔は、俺の目にはどうやっても悲しく写るらしい

コイツはきっと、今俺に満面の笑顔を見せているはずなんだ

だけど、俺には自分に都合のいいように悲しそうな顔に見えるんだ

俺との別れを悲しんでいるように・・・






「・・・・咲は、綺麗だよ」






そう言うと、咲ははにかむように笑っていた

「・・・・綺麗だよ、泣けるほど」

そう言うと、咲は俺の目に浮かぶ涙を見て口に手を当てた

白い手袋で咲の目しか見えなくなっていた



どうやら、俺だけじゃない



咲は本当に悲しんでいた

それが俺との別れの為なのか

それともこんな俺を哀れんでいるだけなのか

そんなの・・・関係なかった

俺はただ、ただ好きだった


咲は泣いていた


俺はそんな咲に、優しく微笑んだ

「・・・・やめて・・」

小さく呟きながら、咲はその場に泣き崩れていた

俺はその時気付いた

咲が、背中に背負っているものに






「・・・・泣くなよ、もう」






俺は咲にゆっくりと歩み寄った

俺が咲に触れるだけで、咲の周りの世界までも崩れていきそうだった

どうせなら・・・


















全て、壊してしまいたい




















なのに

泣き崩れる咲をみるだけで

俺は何も出来なくなる




「・・・もう、泣くな。お前は今から幸せになるんだろ?」




そのドレスがあまりに綺麗で

俺はもう、分かっていた

咲の今の美しさは、もう、祐司の為だけにあるんだと




俺は、咲を追い越して窓のそばに歩み寄った

「・・・逃げたいよ、俺だって・・」

そう呟いた声が咲に届いたのかは分からない

ただ、咲は泣いていた

どうしようもなく溢れ出る涙を、咲は困った顔で流し続けていた

咲・・・ゴメン

連れて行く事が出来ない、こんな弱虫な男でゴメン

一緒に笑う未来が見えなくて・・・・・ゴメン












―――新郎 ユウジ アナタハ 妻サキヲ




     病メルトキモ 健ヤカナルトキモ 愛シツヅケテイクコトヲ




          誓イマスカ?―――










「・・・はい、誓います」


祐司の凛々しい声が俺の耳に届いた












―――新婦 サキ アナタハ 夫ユウジヲ




     病メルトキモ 健ヤカナルトキモ 愛シツヅケテイクコトヲ




          誓イマスカ?―――











「・・・・・」


咲の言葉が詰まっていた

「・・大丈夫?」

祐司が心配そうに顔を覗く

「・・・うん、感極まっちゃって・・」

そう答える咲の声は、まだ震えていた






「・・・・・誓います」






咲が、幸せを誓った








俺は、一人席を立った

静かに端を通って、俺は会場を出る












いつの間にか、空は晴れていた

沈んでいく夕日を見ながら、俺は海沿いの公園でボーっとしていた




咲・・・


言葉に出来ない想いを、いつも咲は分かってくれた


俺が辛い時、悲しい時


口には出さない俺の本音に、いつも真っ先に気付いてくれたのは咲、お前だった


もう、いいから


今の俺には、もうそれだけで十分だから


だから・・・


幸せを誓った愛しい咲、どうか、どうか・・・




















―――そのドレスに、悲しみは背負うなよ




















咲は、控え室で泣き崩れた




化粧台の上にあった俺の置手紙を、しっかりと握って




「・・・ゴメンナサイ・・」




これでいいんだ


もう、いいんだよ


幸せな結婚を、祐司と二人で作り上げてください


子供を産んで、母親になって


そしていつか、もしまた出逢う日が来たら










俺に、「幸せだよ」って、笑ってくれ










沈みかけたオレンジの夕日が、俺の頬を幾度となく伝う涙を照らしていた


もう泣くな


もう泣くな






泣かないで、愛しい人よ・・・
















END.








******************

我ながら

ながーーーーーーーーーーい!!!

コレ読んだ人

凄いww

君には僕の愛を与えようwwww

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コメント

BaBy DoLl(6割方消息不明)

'07年9月11日 21:22

みゅきぃ
赤子だよ~w

切ないですよ~
やっぱ、普段巧みなかしかいてる人は文書かせても上手いんですねぇ。
惚れた。
感動した。
尚也、幸せになれっ。
相手が居ないなら私があいt(終了

すてきだぁ。

れんこんは煮ると上手いんだなこれが。
今日晩御飯だったよ。

応援するさ、一生ww

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